今、心から思う「人生は楽しい」 石脇将太(33)電動車椅子サッカー〜競技に懸けるそれぞれの物語 パラスポーツ選手の肖像シリーズ(1)<PR>

会場沸かせる瞬時の判断

前面に四角いフットガードが付いた電動車椅子を手足のように操り、一瞬の隙を突いてパスを繰り出す。ボールを受けたチームメイトがゴールを決めると、試合会場からはどよめきが湧き起こった。石脇将太(33、浜松市)は、静岡県唯一の電動車椅子サッカーチーム「SFCデルティーズ」の主将としてチームを率い、全国大会にも出場するプレーヤーだ。強みはプレースキック。ゴール前のフリーキックでは、時に電動車椅子を回転させ、狙ったポイントに的確にボールを送る。チームメイトに次々と飛ばす指示がはまり、点が積み重なっていく。

「スピードは毎時10キロ以下と決まっているので、いかに頭を使って相手の嫌なポジションを取り、意表を突いた所に蹴り込むかが勝負です。それには、練習を重ねてプレーの精度を上げていかなければなりません」

持てる機能を最大限に生かし

パラスポーツの一種、電動車椅子サッカー。比較的重度の障がいのある選手が多い。専用の車椅子を手元のジョイスティック型コントローラーひとつで操作し、ガードにボールを当てて巧みに操る。男女混合、1チーム4人制。制限速度はあるが、ボール際のスピード感とチームワークによる戦術、選手たちの繊細で大胆なパスやドリブルが、観戦者を魅了する。国際的には「Powerchair Football」と呼ばれ、世界大会もある。

石脇は生まれつき筋ジストロフィーを患い、プレー中も含めて24時間人工呼吸器を装着している。日常生活には介助が欠かせないが、普段は仕事として小さな陶芸作品を制作しているという手先は、人並外れて器用。繊細なコントロールが、大きな車椅子を自在に動かし、見る人を驚かせるダイナミックなプレーを生む。

競技との出会いは、特別支援学校に通っていた中学生の頃。1年時に部活動で先輩のプレーを見て、「こんなことができるのか」と衝撃を受けた。すぐに入部を希望したが、既に夜間は人工呼吸器が必要な状態だったため、両親は反対した。母親の里美さんは「当時の競技用車椅子は、フットガードの代わりに半分に切った車のタイヤが前面に付いていて、車高も今より高いものでした。接触や転倒があったらと心配で、やってみたらと言えませんでした」と話す。

だが、石脇の気持ちは揺るがず、とうとう両親は根負けした。中学3年で競技を始めるとすぐに頭角を現し、数年で選抜チーム入りや個人賞獲得など目覚ましい活躍を見せる。「試合で全国に出かけ、顔や名前を覚えてもらい、声を掛けられるようになりました。障がいの有無に関わらず、人間的な魅力にあふれる人たちと出会い、自分も同じように成長したいという目標ができました」

「できることが少ない自分」が一変

幼少期は「人見知りでおとなしく、口数も少なかった」(里美さん)といい、石脇本人も「休みの日は自宅で好きなアニメを見たり本を読んだり。障がいがある自分にできることは少ないと思っていました」と振り返る。競技を始めたことで、社会との距離は究極に縮まった。「生きることは楽しいし、努力すれば人としていくらでも成長できる。やれることには何でも挑戦したい、と思うようになりました」

試合はもちろん、学校での講演など、求められれば介助者を伴ってどこへでも出かけていく。臆することなく自身の障がいや競技への思い、意見を語る。「障がいのある自分がプレーすることで、こうして注目してもらえる。それは特別なことで、本当にありがたいと思っています」。当事者として積極的に声を上げていくことが、競技を通じて多くのものを得てきた自分の役目と感じている。

シュート動画、世界で閲覧

情報発信にはインスタグラムなどのSNSも駆使する。競技に加えて普段の生活の様子なども発信し、シュートシーンを集めた動画は世界中で閲覧されている。「電動車椅子サッカーはカザフスタンでもできますか?」とコメントが付いたこともあるという。「プレーを多くの人に見てもらい、人工呼吸器を付けていても、こうして人生を楽しんでいる姿に触れてほしい」と願う。

一方で、練習場所の確保を始め、競技環境には課題が多い。競技用の電動車椅子は重く大きいため移動には大型の車が必須。全国的にチームが少なく、遠征費用も高くなりがちだ。性能のいい海外製の車椅子は高価で、購入には周辺機材も含めて百万単位の資金がいる。「競技に触れる機会自体が少ないですが、興味を持ったとしても、なかなか気軽に始められない。安価な車椅子の開発も進んでほしいと思いますし、活動資金も含め、様々な側面で支援をいただけたらうれしい」

そうした中で、2年前に静岡市清水区に開設されたパラスポーツ優先施設「IAIパラスポーツパーク(アイパラ)」は貴重な活動拠点だ。数少ない練習場として電動車椅子サッカーを始め各種のパラスポーツ選手が集う場になり、年間を通して企画される試合やイベントを通じ、競技の普及に大きく貢献している。競技用車椅子のレンタルは他にはない支援だという。「ここで受ける声援は大きな励み。アイパラを足がかりに、もっと多くの若手にチャレンジしてもらえたら」と期待を膨らませる。

次世代の成長が励み

近年チームには中学生を含む若い選手が次々加入した。「年齢性別、世代を超えて協力し、勝利を目指すことができるのもこの競技の醍醐味」という。新加入のメンバーにとって、競技経験の長い石脇はお手本。憧れでもある。先日は里美さんが、中学生の選手の保護者に「教えてもらった技ができるようになったから、将太さんに見てもらいたいと話している」と声を掛けられた。アドバイスしたことがすぐに染み込む手応えが、石脇を奮起させる。「練習でできるようになったことを生かして、試合では想像を超える活躍を見せてくれる。彼らの成長にも貢献していきたい」とうれしそうに語る。攻めの姿勢でプレーを見せ、次の世代に扉を開いていく。

「パラスポーツ選手の肖像」とは

静岡市清水区にあるパラスポーツ優先施設「IAIパラスポーツパーク」で活躍する選手たちの姿とそれぞれの物語を、全6回シリーズで紹介します。

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■IAIパラスポーツパーク
住所:静岡市清水区庵原町1210
駐車場、多目的トイレ、更衣室あり
電話:054-368-5750(10:00~20:30 ※月曜定休)

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詳しくはIAIパラスポーツパークHPをご覧ください
パートナー制度や応援寄付の詳細、問い合わせは応援パートナー募集ページ

電動車椅子サッカーについて詳しくは競技紹介ページ

大会イベント情報は公式インスタグラム(@iai.parasports)へ
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静岡のイベントや企業の動きを発信します。静岡新聞SBSの地域に根差した情報力を活かして企業・行政・教育機関をつなぎ、ビジネス機会と協業を創出するプラットフォーム「SHIZUCONE(しずコネ)」でも記事を多数公開中!

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