【「フリーキーショウ」の「ヒカシュー」ライブ】活動開始から48年。時を経ても変わらぬ「ポップソング」としての強度

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は5月23日に静岡市葵区のライブハウス「フリーキーショウ」で開かれた音楽家で詩人の巻上公一さん(熱海市)、打楽器奏者佐藤正治さん(同)が在籍するバンド「ヒカシュー」のライブを題材に。
(文と写真=論説委員・橋爪充)

いわゆる「年イチ」で行われるヒカシューの静岡市でのライブ。これで10回目という。前回が昨年11月だったから、およそ半年ぶりという短いインターバルで迎えた静岡公演。5月24日には、2012年以来となる愛知県蒲郡市のフェス「森、道、市場」への出演が控えている。

前回のライブの後、巻上さんは古希を迎えた。現在のメンバーの中では、三田超人さんが一足先に70歳の壁を越えている。再来年に結成から50年を迎えるヒカシューは、国内屈指の長寿バンドと言える。

3月に公開された田口トモロヲ監督『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』は、インディーズレーベル「テレグラフ・レコード」の代表としても知られた地引雄一さんが1986年に出版したミュージック・マガジン増刊『ストリート・キングダム 東京パンク/インディーズシーンの記録』を劇映画化したものだが、ヒカシューはまさにこの時代からずっと活動を続けているのだ。

映画でも描かれている1979年の新宿ロフトの6日連続ライブイベント「DRIVE TO 80's」にも出ている。リザード、フリクションなどをモデルにしたバンドが物語の中軸をなすが、あの映像にヒカシューがいても何ら不思議ではない。

今回のフリーキーショウでのライブは6人編成。「準メンバー」の清水一登さんに代わってキーボードにモダンチョキチョキズの吉森信さんが入った。3年前の5月に亡くなった美術家イリヤ・カバコフさん(旧ソ連・ウクライナ出身、作品はイリヤ&エミリア・カバコフ名義で発表)にささげた2024年のアルバム『雲をあやつる』の冒頭楽曲『棚田に春霞』でメランコリックにスタートし、昨年12月発表の最新作『ニテヒナルトキ 念力の領域』から『お邪魔なんだよちからこぶ』『カワウソの祭典』『棒人間』『空気を脱ぐ』につなげる。昨年加入の新メンバー纐纈雅代さんのサックスありきのサウンドに変貌したヒカシューの現在地が示される。

後半は過去曲を中心に。最も古いのは1988年の『人間の顔』『ゾウアザラシ』あたりだっただろうか。全体的にインプロビゼーションは抑えめ、巻上さんのテルミンも控えめだったが、逆に言えばかっちり構築された「ポップソング」の魅力を強く打ち出しているように感じた。1980年代の曲が、歌詞が、2020年代半ばにライブで聴いても全く違和感がない。ヒカシューは40年前の自分たちに「出会う」ことにためらいがないのだ。

彼らの音楽性について「ノンジャンル」という形容が付くが、筆者は「タイムレス」という言葉も添えたい。1970年代から日本の社会、世界の状況は大きく変容したが、ヒカシューの楽曲の強度は変わらない。いつの時代も説得力を失わない。とことん普遍的なのか、徹底的に既存の価値観の外側にあったからなのか。その答えを知るために、今後も彼らの活動を見つめ続けたい。

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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