特集はSDGsです。西伊豆の海では近年、海の資源を食べすぎるとして海のギャングとも呼ばれるウツボが増え、漁業者を悩ませています。そこで地元の漁協が釣り人の力を借りて伊豆の海の環境を守ろうという取り組みが始まりました。
静岡県西伊豆町の仁科漁港です。冬にはカサゴなどが良く釣れることで知られています。
<西伊豆町地域おこし協力隊・仁科港巡視員 三上陽平さん>
「ウツボですね、トラウツボ。仁科の皆さんにとっては『食害魚』で、網にかかるイセエビなどを食べちゃうので好かれていない」
歯が鋭い肉食の魚「ウツボ」。地元での呼び名は『食害魚』です。
<伊豆漁協仁科支所 山田雅志運営委員長>
「ウツボはね、イセエビを食べちゃったりとか、イセエビ漁の網にかかった魚とかイセエビまで食われちゃってるもんで。漁民も減ってるので、食害魚を退治する人も少ないんですよ。だから、そこでお客さんが一緒に食害魚を退治してくれれば」
海のギャングとも呼ばれるウツボから西伊豆の海を守るため釣り人の力を借りようという取り組みが始まりました。
其の名も『食害魚ハンティング』。仁科漁港で釣り場を有料で予約するサービス「海釣りGO」に登録した釣り人はウツボを釣り上げると港の直売所で買い取ってもらうことができます。
「ウツボ釣ってきました。買い取りお願いします」
「じゃあこちらウツボ1本250円で買い取らせていただきます」
<企画した株式会社ウミゴー代表 國村大喜さん>
「釣り人が漁業者の方々の取り組みもある程度理解しながら、しかも楽しみながら何かできるアクティビティというところで、今新たにできたのが『食害魚ハンティング』です」
仁科漁港にある産地直売所「はんばた市場」に持ち込むと、ウツボは一匹250円。西伊豆町で使える地域通貨「サンセットコイン」で買い取ってくれます。この食害魚ハンティング、対象はウツボだけではありません。海藻を食べすぎる「ニザダイ」「アイゴ」「ブダイ」「イスズミ」の4種も対象です。
これらの魚は海藻が減って戻らない現象『磯焼け』を起こし、サザエやアワビなど貝類が不漁になる原因と言われています。
<伊豆漁協仁科統括支所 山田雅志運営委員長>
「そういうの(食害魚)を『海釣りGO』のお客さんが釣ってそのまんまリリースするんではなくて、はんばた市場町と連携して買って、買ってというか夕日(サンセットコイン)に交換していただいて、また豊かな海に戻していきたいと思います」
食害魚ハンティングで引き取る対象の食害魚は食べればおいしい魚ぞろい。醤油とイカの肝で和えた「おひつブレイカー」、味噌、タマネギ、ショウガ、トウガラシと和えた「酒樽デストロイヤー」などおいしく食べる魚料理を開発し、売れ筋にもなっています。買取条件は、魚が生きていること、体長が20センチ以上あることです。
<はんばた市場 大政勇太さん>
「今やっぱりある資源を活かしていきたいっていうとこで、食害魚もなかなか市場だとお金がつかない魚であるんですけども、そういった魚を有効に利用させていただくっていう、やっぱり色々ね、アイデアを出して利用すれば、魚も利用できますので」
<株式会社ウミゴー代表 國村大喜さん>
「やっぱり海って釣り人も使うし、もちろん漁業者さんは職場として使う。皆さんが海という恵みを享受していく世界の中にあるので、やっぱり全員で海のことをケアして、海のことを守っていくっていう、心が1つになればいいなという風に思っています」
国内の漁港は『釣り禁止』がルールになっているところが一般的です。西伊豆町の仁科漁港では釣り客に有料で釣り場を確保し、自動車を近くに駐車できるなど環境も整えています。
海や港の環境維持に漁業者がお金を使い汗を流していますが、釣り客も海の恵みを受け取る一員として海の環境を守るのに一役買うというのは、SDGsの海の資源を守ること住み続けられる環境を守ることの実現につながりそうです。
企画をした國村さんは仁科漁港のように釣りができる漁港を静岡県内に増やしていきたいということです。