プチぜいたくもOK コロナで消費変化 静岡県内小売り「商機」

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛で観光や外食といった需要がしぼむ一方、消費の関心が、“プチぜいたく”な高級品や巣ごもり環境を充実させる商材に向かっている。静岡県内小売各店は「コロナ禍で変わりつつある消費者ニーズをつかみたい」と売り込みに力を入れる。

売れ筋の価格帯が上昇した時計の売り場=14日、静岡市葵区の静岡伊勢丹
売れ筋の価格帯が上昇した時計の売り場=14日、静岡市葵区の静岡伊勢丹

 「年末年始に海外旅行などに行けなかった分、財布のヒモは緩んでいる。高額品でも即決する顧客が増えている」。静岡伊勢丹(静岡市葵区)の時計・宝飾品売り場の担当者は消費行動の変化を口にする。
 ことしの初売り商戦で衣料品は苦戦した一方、高級時計の売り上げは前年を約10%上回った。3万~8万円の価格帯が売れ筋だったが、10万円以上の商品が好調。人気ブランドは例年よりワンクラス上の50万~60万円台が人気という。
 自宅で過ごす「おうち時間」を充実させる家電製品や高級家具にも商機を見いだす。
 ノジマ新静岡セノバ店(静岡市葵区)によると、高画質テレビは前年比1・5倍の売れ行き。「アーティストのオンラインライブ配信を目当てに購入する動きが目立った」(高橋正浩店長)という。
 遠鉄百貨店(浜松市中区)では10万円以上のソファや机の需要が伸長。担当者は「快適な住環境を整えようと、品質の高いものを求めるニーズに応えたい」と、品ぞろえと顧客へのアピールを強化する。
 自動車販売は、コロナ禍でも安全な移動手段として関心が高まり、夏以降から販売が回復した。静鉄グループのトヨタ自動車系列の販売会社3社でつくる静鉄GTホールディングス(静岡市葵区)によると、小型車「ヤリスクロス」のほか、高級感のある新型「ハリアー」、「アルファード」といった高級車種がけん引。納車に時間がかかる状況もあるという。
 コロナ禍での消費に対する価値観の変化について静岡経済研究所(同区)の恒友仁常務理事は「旅行や外出が抑制されている分、生活空間やプライベート時間の満足度を高めたいという消費者心理が強まっている」と指摘する。

 <メモ>静岡経済研究所が昨年12月にまとめた消費動向調査によると、コロナ禍で県内世帯の6割が景気後退を実感している一方で、自身や家族に費やす時間が増えたことを背景に生活レベルに対する満足度は上昇した。節約した家計費目は「旅行・レジャー費」が最も多く、充実させた費目のトップは「毎日の食費」で32.6%。「子供の教育費」22.5%、家電や家具、車などの「耐久消費財購入費」18.0%と続いた。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞