北川民次(島田出身)の足跡知って 旧保育園舎にギャラリー、絵画や写真など公開

 島田市のくりのみ保育園の元理事長栗原東亜子さん(77)が7日、遠縁に当たる旧五和村(現島田市)出身の画家北川民次(1894~1989年)が家族らに残した作品を展示するギャラリーを同市内にオープンする。同保育園の近隣に位置する旧園舎を改装した。栗原さんは「地域の皆さんに地元の芸術家の足跡を知ってほしい」と願う。

ギャラリーに展示する北川民次の作品を確認する栗原さん=6月下旬、島田市
ギャラリーに展示する北川民次の作品を確認する栗原さん=6月下旬、島田市

 自身の象徴であるバッタや聖母子を描いた皿、花売り娘を題材にした日本画など約20点を公開する。往時をしのべるスナップ写真や愛用品も展示する。民次のいとこで栗原さんの祖父深見仙一郎さん(1894~1982年)の遺品が中心という。
 民次は、日本画をたしなむ同い年の仙一郎さんに特別な親しみを覚えていて、終生の友として付き合った。留学先の米国から仙一郎さんに宛てた手紙も残る。「遊蕩児」と題したエッセーでは、長唄をはじめ諸芸に通じる仙一郎さんについて「豊かな人間味のあたたかさで同席の人々を感動させた」と記した。愛知県に居を構えてからもたびたび深見家を訪れ、仙一郎さんと交遊したという。
 栗原さんは、2019年まで子育て支援センターとして使われていた旧園舎の再活用を検討する過程で、仙一郎さんから譲り受けた作品や資料を確認。民次らしい奔放なタッチの作品群に改めて心引かれ、公開を決めた。ギャラリーには同市出身の画家や陶芸家、園児の力作も展示する。
 島田市博物館の学芸員として民次展(98年)を担当し、今回のギャラリー開設のアドバイスも行った渋谷昌彦さん(67)は「作品には民次の優しさ、厳しさが両面表れている。常設展示は、島田の文化底上げにつながるだろう」と期待を込めた。

 <メモ>北川民次(きたがわ・たみじ) 1894年、旧五和村(現島田市)生まれ。米国、キューバを経て1921年メキシコ入り。国立美術学校を卒業し、現地で個展も開いた。36年に帰国後、二科会員として活躍。78年、同会長。89年に愛知県瀬戸市で死去。

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