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自動車メーカーのEV戦略が加速!? 今さら聞けない「EV」「PHEV」とは?

EV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)説明できる?

今年に入り日本でも、多くの自動車メーカーがEV(電気自動車)のニューモデルやEVの開発を発表するなど、EV戦略が加速しています。今回は、いまさら聞けないEV・PHEV(プラグインハイブリッド車)について、モータージャーナリストで日本自動車ジャーナリスト協会・会長の菰田潔さんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※5月4日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:ここまでガソリンが高くなってくると、EVへの注目がさらに高まってくるのではないでしょうか?

菰田:そうですね、ガソリンが高くなればなるほど、EVが有利になる状態ですね。

牧野:私もEVの購入を検討した方がいいのかなと思ったのですが、実際はどうでしょうか?

菰田:EV自体は、日本でも、ヨーロッパでも車種が増えているので、選択肢は増えてきていますよ。

牧野:最近のEV事情は急速に変わってきているんですか?

菰田:EUの政策執行機関であるEC(欧州委員会)がエンジン搭載車を認めない法案を作ろうとしています。そうすると、​ヨーロッパの各自動車メーカーはEVの種類をたくさん作り始めたんです。日本はちょっと遅れているといわれますが、そんなことはありません。今年になってから日本車でもたくさんのEVが出てきています。

EVとPHEVの違い

牧野:EVやPHEVなどありややこしいですが、これらは違うんですか?

菰田:まず、電気モーターがついている車は電動車といい、EV(電気自動車)だけでなく、ガソリンエンジンでも電気モーターでも走れるPHEV(プラグインハイブリッド車)やHEV(ハイブリッド車)、FCEV(燃料電池電気自動車)もすべて電動車です。EVは、バッテリーのエネルギーと電気モーターだけで動く車のことを指し、我々は専門用語でBEV(ベブ=バッテリーEV)と呼んでいます。ガソリンエンジンでも電気モーターでも走れて、外部から充電できるものがPHEVになります。

牧野:どちらも地球にやさしいということになるんでしょうか?

菰田:走っているときにはCO2を出さないので、一見すごくいいなと思うんですが、BEVに充電するときの電気がどうやって作られたかが問題なんです。例えば、火力発電所でCO2をたくさん出して作った電気であれば、最新の車に搭載しているエンジンの方がよほどキレイな排ガスなんです。

牧野:電気をどうやって作ったかという過程も地球環境にとっては影響があるわけですから、トータルで見る必要がありますよね?

菰田:そうですね。いわゆる環境負荷を原料採掘から廃棄まで全ての工程で数値化して見ていかないといけません。

EVの日本での普及率

牧野:現在、日本でのEVの普及率はどれくらいですか?

菰田:意外と少なくて、2020年では0.6%くらい。2021年の後半でも1%程度ですから、日本ではまだまだ普及しているとはいえません。

牧野:ヨーロッパはどうでしょうか?

菰田:普及し始めているといえます。例えばノルウェーは60~70%がEVなんです。これには税制の問題もあり、ノルウェーは100%車を輸入しているので、輸入車には関税が100%課せられ、つまり価格が2倍になってしまいます。EVは関税が免除されているので、半額で購入できる感じなんです。それから、走っているときの電気が無料だとか、駐車が無料になるとか、すごい優遇されているので、みんな安いから乗っているんです。日本もこれから日本車で、トヨタbZ4X、スバルソルテラ、日産アリア、レクサスRZ、あるいは軽自動車のBEVも登場予定ですので、もう少し販売台数は伸びていくとは思います。

牧野:ここ2、3年で状況が変わってきそうですか?

菰田:そうですね。選択肢が増えていくと思います。

EVのメリット・デメリット

牧野:EVのメリットを教えてください。

菰田:EVのメリットは優遇税制によって、購入時と車検のときに経費が安く済みます。車検や整備の話でいうと、エンジン、トランスミッションがなく、アクセルを戻したときに回生ブレーキといって、発電しながら止まるのでブレーキパッドが減りません。なので、整備代もすごく安く済みます。それから、走っているときは静かなんです。変速の段差もなくスムースに走ります。また、アクセルペダルを踏みこむと、遅れなく加速するので気持ちよく運転できます。

牧野:一方で、デメリットもありますか?

菰田:欠点としては、充電に時間がかかります。例えば、家庭で200Vで充電するとなると、何十時間もかかります。途中まで減った車を夜間に充電すれば次の日に使えることもありますが、空っぽになってしまうと、バッテリーが大きい車ほど時間がかかります。それから、長距離を走るためにはたくさんバッテリーを積まないといけないので、その分だけコストもかかり、重量も大きくなります。あと、非常に大きな問題としては、もし日本の自動車の半分がBEVになったら、原子力発電所をあと13基作らないと電気が足りない計算なんです。各地域に原発を揃えておかないといけない。火力発電所で作ったものだとBEVで利用する意味がなくなってきます。ですので今後BEVだけになることは、日本ではありえません。

牧野:エンジンと電気モーターが半々のPHEVではどうですか?

菰田:PHEVは、静かに走りたいときは電気モーターだけ、力強く走りたければ電気モーターとエンジンの両方の力で走ることができるのがメリットです。ガソリンさえ補充すればいつまでも発電できるので100Vで1500Wの電気が使え、災害時やアウトドアで活躍できます。デメリットとしては、エンジン、電気モーター、動力用バッテリーを搭載するので価格がちょっと高くなりますが、その辺りを理解して乗ればいい車だと思いますし、これから増えると思います。

牧野:EVもPHEVもバッテリーはある程度劣化してきたら交換する必要がありますよね。

菰田:これが、劣化はしていくんですが、それほど大きくは劣化しないんですよ。例えば、10万キロ乗って、何割か性能が落ちるという程度。今までバッテリーを満充電で400km走っていた車が、10万km乗ったら満充電でも350km、300kmになる程度で、乾電池が切れるように急に走らなくなることはありません。

牧野:EVをそろそろ検討している人もいると思いますが、どんな人におすすめか、そして注目のEVなどがあれば教えてください。

菰田:近距離をちょこちょこ走る人にはBEVがいいと思います。特に最近田舎ではガソリンスタンドが少なくなっていることもありますので、これから出てくる軽自動車のEVには注目です。

逆に、長距離乗りますよという人は、満タンで1000キロ走る化石燃料の方がいいわけです。そういう意味では、PHEVは中間的な位置づけで、近距離は電気で走って、長距離はガソリンエンジンで走ると。これからはオールマイティで使えるのがPHEVかなと感じています。

牧野:その普及のためには、充電施設が増えて欲しいですね。

菰田:パーキングエリアに行っても、順番待ちということになってしまうと、待ち時間プラス充電時間のロスになってしまうのでデメリットになるかなと。それから今のところ、マンションに充電設備がないので、いつも外で充電しないといけなくなります。

牧野:住宅事情、エネルギー問題など、いろいろ絡んでいる印象がありますね。今回もありがとうございました。
今回、お話をうかがったのは……菰田 潔さん
1950年、神奈川県生まれ。モータージャーナリストで日本自動車ジャーナリスト協会会長、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。ほかBMW Driving Experienceチーフインストラクター、BOSCH認定CDRアナリストの資格を持つ。近著に「クルマの運転術」(ナツメ社)、「あおり運転 被害者、加害者にならないためのパーフェクトガイド」(彩流社)がある。

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