「コラッとラッコ」の巻/子育てコラム「あすなろ」

 わが家は夫が単身赴任中で、3歳の息子と2人きりで過ごす時間が長いです。夫と育児について話し合いもしますが、基本的にしつけは私次第。そう思うと責任を感じます。
 先日、立ち寄ったパン屋で母親が幼児を叱る剣幕に驚きました。おしゃれできれいな女性が5歳ぐらいの男の子に、「トレイは(持っては)ダメ!」「あなたがやると落とすでしょ、もう。(トングを)貸しなさい」「ねえっ!パンに手を出さないの!」
 服装から、近くにある名門幼稚園に通っていると思しきその男の子は、格別やんちゃそうには見えません。矢継ぎ早に言われて涙目になっていました。傍らに、ご主人とおぼしき、やはりおしゃれな男性がいましたが黙って見ているだけ。やはり叱る役は母親なのか、と少し残念に思うともに、自覚はなくても私も同様のきつさで叱っているのかも、と反省しました。
 以前、ばあば(実母)から「子どもになめられるから、叱るときはもっと強く言わないと」と助言されました。通っているこども園の先生にも、「子どもは多少叱られたってお母さんが大好きよ。だから叱る時は叱る、強いお母さんの方がいいかもね」と言われました。一番長い時間を共有して信頼関係を築いている人こそ、時には憎まれ役にという理屈は分かります。「子どもを伸ばす叱り方」などのマニュアル本を読んでみたりもしますが、どうも実践は難しそうです。
 叱る内容のダントツ1位は「早く寝なさい」。タイミングよく効果的に注意しないと、眠さも手伝って息子はぐずって怒り、私も疲れていらだってしまいます。だんだん感情的になり、言葉がきつくなっていくのが自分でもわかりますがなかなか止められません。
 だからせめて、寝る前に仲直りするようにしています。電気を消して仰向けに寝転がって、子どもを自分の体の上に乗せます。息子お気に入りのラッコごっこです。二人で海を漂う親子ラッコになりきって「あっクジラが見えたよ」「ホタテを割って料理しよう、カンカンカン」「昆布(毛布)をおなかに巻いて」などとしゃべりながら眠りにつきます。体重が重くなってきた息子といつまで親子ラッコになれるか分かりませんが、叱りつつも「私はあなたが大好きよ」という思いを伝えていけたらなと思います。 (たこ八) 子育てコラム「あすなろ」(798) 「コラッとラッコ」の巻

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