学びの代償~奨学金返還の実情(番外編) 識者インタビュー

(2018/4/7 11:01)
家計の教育費負担の重さを指摘する森俊太教授=静岡市内

 奨学金を含む、教育費負担の現状の課題は。静岡県労働者福祉基金協会静岡ワークライフ研究所の教育費の実態調査で、委員長を務めた静岡文化芸術大・文化政策学部長の森俊太教授に聞いた。

 ―日本の教育費負担の特徴は。
 「外国と比べて教育への公的支出が少ない。教育費の中でも高額な大学進学を助ける返還不要の給付型奨学金も乏しく、家計の負担が非常に重い。進学率の上昇、学費の高騰、非正規雇用の増加や所得の伸び悩みなどが重なり、可処分所得に占める教育費の割合が高止まりしている」
 ―調査で明らかになった課題とは。
 「重い家計負担は親の生活を圧迫し、子どもの人生も制約している。これまでは多くの中間層が10年以上かけて子どものために多額の教育費を準備してきた。雇用環境が不安定化した今、それは容易でなく、奨学金利用者が増えた。その結果、自分と子どものダブルの教育費を重荷と感じる若者が結婚、出産、消費などに抑制的になっている。経済成長期には顕在化しなかったが、経済成長が見込みにくく人口も減る時代、家計の教育費負担の重さは社会全体の活力低下を招く。奨学金の延滞者だけでなく、無延滞者を巡るこうした現状も大きな社会問題だ」
 ―家計が重い負担を甘受するのはなぜか。
 「受益者負担意識の強さが一因だ。負担に悩む回答者の多くが教育費、特に大学授業料について受益者負担を当然と考え、所得の半分以上を教育費に充てることに疑問を感じていない。一方、負担は確実に増している。受益者負担の規範意識と実際の負担感の間で葛藤が生じている」
 ―負担にもかかわらず進学者は増えている。
 「学業でなく社会的な“身分”を示す学歴を得るため進学する側面もある。進学者の約半数が奨学金を借りていて、卒業後に安定収入を得られず返還に苦しむ若者も多い。これは、大学や専門学校の多くが、学生の学費の原資である奨学金なしに経営が成り立たず、高額な授業料に見合うだけの価値を学生に提供できていないことの表れでもある。学校側も無関心ではいられない」
 ―どのような対策が考えられるか。
 「給付型や無利子型の奨学金を拡大し、大学授業料の減額措置も充実させるべき。高校の仕組みを見直した上で高卒雇用の拡充や、現在の高専を参考にしながら高校に職業教育課程を新設することも一案だ。返還義務のある奨学金をはじめとした、教育費の重い家計負担により、経済格差が教育格差につながり、それが親から子に連鎖する再生産の仕組みが固定化されている。個人の損得を超え、社会全体を見据えた視点から考え直す必要がある」

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