最後の「かこワールド」合作 下田の絵本作家、思い託され絵創作

(2018/10/29 17:02)
かこさんから渡された絵の素案を手に、創作を振り返る絵本作家の鈴木まもるさん=下田市加増野

 今年5月に92歳で亡くなった絵本作家かこさとしさんの遺作「みずとはなんじゃ?」の絵を、下田市の絵本作家鈴木まもるさん(66)が担当している。体力の衰えから自分で絵を描くことを断念したかこさんが鈴木さんに依頼し、合作が実現した。鈴木さんは「かこ先生は最後の最後まで子どもたちに本を届けることに情熱を注いだ。広くて深い“かこ先生ワールド”を1人でも多くの人に楽しんでほしい」と期待する。
 作品はかこさんが20年近く構想を温めてきた「水」がテーマ。氷や気体に姿を変える水の不思議を通し、科学の面白さと自然環境の大切さを感じてほしいとの願いが込められている。文章の執筆は数年前からかこさんが進めてきたが、緑内障の悪化で長い線を描くのが難しくなっていた。
 2人の交流は7年前、鈴木さんが長年研究している鳥の巣の絵本を贈ったのがきっかけ。「精緻な観察と愛情あふれる表現。裏表紙まで含めた全体の構成が一冊の世界としてよくできている」。お礼の手紙につづられた言葉は「とてもうれしくて、今も宝物にしている」と振り返る。
 今年3月、絵の依頼を受けて訪ねると、かこさんは「頼みますね」と何度も手を取り、素案を託したという。急いで下絵を仕上げ了解をもらい、本番の絵作りに入る直前、訃報が入った。
 その後の創作では悩むとかこさんの本を手に取ったという。「ページをめくると新しい世界が次々広がる。本の楽しみを大事にした先生ならこんな風に描くのでは」。思いを巡らせ、画用紙に向かった。完成した本には目を輝かせて水や氷と戯れる子どもの姿のほか、水が育む命の多様性も表現した。だるまちゃんなど往年のキャラクターもさりげなく登場させ、かこ作品へのオマージュとなっている。

 <メモ>かこさとし(加古里子、1926年―2018年) 福井県生まれ。東京大工学部応用化学科を卒業後、化学会社の研究所に勤める傍ら、児童文化活動などに携わる。1959年「だむのおじさんたち」を出版。73年には勤務先を退職した。代表作は「からすのパンやさん」、「だるまちゃんとてんぐちゃん」など。生涯手掛けた作品数は600作を超える。「みずとはなんじゃ?」(小峰書店)は11月8日発売。初回配本分は直筆原稿や下絵などを掲載した付録が付く。A4変型判・全32ページ、1620円。

「静岡暮らし・話題」この他の記事

> 一覧

  • 静岡購読お申し込みは 0120-89-4311

  • 静岡新聞データベース

ニュース記事アクセスランキング

    ニュース特集アクセスランキング

      • スクープ投稿

      • こち高

      • 静岡購読NIE

      • 静岡新聞の本

      カテゴリー'