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2012年2月

2012年2月25日 08:33

山田辰美 日々のまなざし

2月25日OA 着物

着物

 

初めはお蚕さんの繭玉だった

紡いだ糸は織られて輝く布になる

染め上げられて様々な表情の反物は

やがて美しい着物となる

 

紡がれた無数の命

草木の汁で染め上る

あらゆる自然の素材を活かす先人の知恵

着物に息づく日本人の精神(こころ)

自然に寄り添うライフスタイル

美しく緩やかな形は

変わることなく一千年も引き継がれている

 

一反の織物から

子どもからあらゆる体型の人までを

包み込む不変の形が生まれる

細長い生地を8つに切って縫い合わせたのが着物

仕立てる時に捨てる生地は全くない

反物から作られた着物はほどけば

また元の反物に戻る

 

親から子へと代々受け継がれていく着物

寸法が変われば仕立て直し

染め直すこともできる

幾度も蘇る着物の命

これこそエコのシンボル

もったいないの真髄

 

現代っ子の若い女性までも

しとやかに変える着物

ゆるやかに立ち振る舞うようにさせる力  

しなやかで美しい所作を産みだす

文化という深い風格

究極のおしゃれは流行りすたりを超えているのか

着物を着る

日本人の心を身にまとうという事

2012年2月14日 06:00

山田辰美 日々のまなざし

2月18日OA 冬の朝

冬の朝

 

地平のかなたが

茜色から青に変わるにつれて

木枯らしは静まった

冬の朝だ

天上に白く月は氷りついている

 

壁に体当たりするように

身体を固くして外に出た

澄んだ朝の大気の中にするりと割り込む

息をするたび機関車のように煙を吐く

はあっはあっはあっ

歩みに合わせて霜柱が音を立てる

ざっざっざっ

 

立ち止まると静寂に包まれる

生き物たちは息を潜めている

紅葉した草の葉に

霜の白粉(おしろい)がきれいだ

こんなに厳しい寒さの中でも

地面にへばり付いて

放射状に葉を広げる草たち

真中に小さなつぼみを宿している

アカガエルのオスは冬眠から起き出して

日だまりの水辺を探し始めた

 

こんなに厳しい寒さの中で

どうして自然はこんなに楽天的なのか

寒波に氷付く夜がまた襲うのに

お日様が吹雪に隠れる日もあるのに

生き物は季節の巡りを感じ取れるのか

それはきっと自分の中に

先祖の声と

子孫の声を聞いているんだね

2012年2月10日 17:15

山田辰美 日々のまなざし

2月11日OA 目覚め

目覚め (赤ちゃんのミニ)

 

子犬が寝息を立てている

お前にはひげもまつ毛もあるんだ

野山を駆けるけだものの末裔

今はバスタオルの中で丸まって

眠りをむさぼる

朝だよ

出ておいで

 

お前は全身で伸びをする

開いた手足の指に鋭い爪

こんなところに狩りをする野生が覗いている

小さな口をめいっぱい開けて

可愛いあくびをした

 

夢中になってお腹を満たすと

突然頭を低くして

突進する

くるっと仰向けになって

爪を出し空を掻き

目に見えない誰かと

無邪気な戦いを始める

 

あどけないお前を駆り立てるもの

今を生きる喜びと

未来の予感

 

2012年2月 4日 07:47

山田辰美 日々のまなざし

2月4日OA 落葉

落葉

 

自分を育ててくれた母樹よ、森よ

愛おしいこの場所を離れようとする今

春風にそよそよと

幼い夢をみていた頃を想っていた

 

四方に伸びた梢のさらに空に近いところで

波にもまれるようにさわさわと

瑞々しい体を躍らせていた

 

夏の日差しを全身に受けて、

さらさらとしなやかに揺れていた頃

光をこぼすまいと

背筋を伸ばしていたものだ

厚みや大きさも十分に育って

母樹に光合成で恩返しできたと思う

 

秋の空はさわやかだが、夜の冷え込みがこたえる

木枯らしにふるえ、かさこそと身を固くした

ああ私は老いぼれた葉っぱだ

 

春には虫にかじられ、

夏の激しい嵐にみくしゃにもされた

もはや母樹にしがみつく力も失せてきた

憧れのお日様よ、

見ていて欲しい私の最後

 

自分から、きっぱりと別れを告げて

梢から地上に落ちるつもりでいる

そんな私に最後を告げるように

季節は美しい死に装束を準備し

全身を見事に染め上げた

 

どこへ運び去ろうとするのか

一陣の風が私を揺する

ああ、散るよ

誇りある葉っぱとして