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きらめきデイズ(3)ひなのつるし飾り継承、連なる祈り

(2018/11/1 11:00)
ひなのつるし飾りの魅力を語る森幸枝さん=10月中旬、東伊豆町稲取の工房「絹の会」
ひなのつるし飾りの魅力を語る森幸枝さん=10月中旬、東伊豆町稲取の工房「絹の会」

 日本三大つるし飾りの一つ、東伊豆町稲取地区の「ひなのつるし飾り」は、平成に入って地元婦人会が古老に学ぶ手芸講座を持ったことで復活を後押しした。受講生だった森幸枝さん(72)は同地区に工房「絹の会」を構え、女児の誕生を祝う伝統を守り続ける。
 森さんは終戦翌年の1946年、稲取に生まれた。小学生だった時、友達の家でひな壇の両横につるし飾りを見掛けた。「かわいいな、うちにも欲しい」と憧れた。
 同地区では長女が生まれると、3月の初節句に合わせ祖母や母が55個の細工を糸につるした飾りを一対作り祝う風習があった。難しい細工は1個作るのに数時間を要する。節句前の時期に生まれると、親戚や近所の人が手伝ったり、贈ったりして絆を強めるきっかけになった。しかし、温かな文化は戦争で廃れ、森さんの世代になると各家庭で対応が分かれたという。その後は衰退の一途をたどり、技法を知る女性の高齢化が進んだ。
 93年、飾り作りに価値を見いだした稲取の婦人会がつるし飾りの制作を学ぶ手芸講座を開いた。森さんはすぐ申し込んだ。講座初日の会場は100人近くの女性の熱気に満ちていた。個人的な参加が目立ち、関心の高さを感じた。
 当時婦人会長だった太田良江さん(85)は「技術を知る女性が少なく、指導者探しが難航した」と振り返る。唯一受けたのは80歳の山崎けい子さん=故人=。細工の意味や制作方法を教えながら「丁寧に」と繰り返した。25年たった今、森さんは、言葉の重みを実感する。絹にこだわり、大切に縫い上げる時間こそ、子どもの成長を思うかけがえのない「祈りの時」だと、森さんは言う。
 復活の機運は少しずつ高まり、協力者から昔の飾りを受けるなどして種類を増やした。110個の飾りの基本は桃や猿など。「赤い柿は医師が青くなるほど体に良い」と表が赤く裏が青い柿を仕立てたり、作り手の発想に任せた“おしゃれな”飾りも出てきた。
 明治期に作られた三番叟(さんばそう)の飾りは勇ましく周囲をにらむ。森さんは復活の過程で、満面の笑みの三番叟を作った。最高難度のその細工は豪華で目を引く。「平和な世界で一生笑顔で過ごせるよう」との思いを込めて新しい姿を表現した。地域の宝は、形を変えながら受け継がれる。

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