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ダブルケア(1)母の被害妄想 育児と介護、同時進行に困惑

(2017/1/5 11:00)
母に異変が始まってから、美佳さんは母のためにノートを作り、症状や出来事をつづっている(写真の一部を加工しています)
母に異変が始まってから、美佳さんは母のためにノートを作り、症状や出来事をつづっている(写真の一部を加工しています)

 子どもを抱っこしてゆらゆらすると、自分もそうして母に育てられた、と実感する。幼い頃、熱を出した自分を抱きかかえてバスと電車を乗り継ぎ、病院に通ってくれた母。県中部に住む主婦の美佳さん=仮名、30代=は今、その母(73)から「かばんを持っていったでしょう」「財布を返して」と言われ続けている。
 母は、神奈川県内の実家で父(77)と暮らす。2年前、しっかり者の母が物を「なくした」と頻繁に騒ぐようになった。終日財布を捜しながら去り際には、長男(当時2)と次男(同0)に「靴下を買ってあげて」と5千円を渡してくる。帰宅すると「財布を返して」と電話がきた。美佳さんは本などを調べ、認知症の症状である「物取られ妄想」を確信した。
 検査を勧めたが、母は「遠慮する」の一点張りだ。兄が頼み込んだかかりつけ医が、診察で「今日の日付は」と“チェック”した際にも感づかれ「態度の悪い病院では検査しない」と怒った。
 母は40歳前に美佳さんを産んだ。今でいう高齢出産。「結婚10年でお兄ちゃん、3年待って美佳が来た」と言った。「待って」という表現が心地よかった。嫁ぐ前日、母は「川の字で寝る」と言い張り、美佳さんと父は苦笑して従った。
 それから数年。母は一見普段通りだが、鍋を焦がすなどのトラブルは起きている。被害妄想は美佳さんに集中し、電話越しで怒る様子は別人のようだ。「今度探そう」となだめ続けても心は晴れず、夫の前で泣いたり、子どもに声を荒らげてしまったりする自分に嫌気が差した。美佳さんは「簡単には実家に駆け付けられない。治療を支えたいが母は検査を拒否したまま。打開策が見えない。もどかしい」と涙をこぼした。

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