宇宙エレベーター、僕らの力で 静大工学部「育成部」挑戦10年
(2019/1/13 08:22)-
静岡大工学部生でつくる部活「航空宇宙技術育成部」が、地上から宇宙に人や物資を運ぶ「宇宙エレベーター(SE)」につながる技術開発に挑んでいる。学生らは「未来の構造物に理解を深められる」と意欲的に取り組む。技術発表の場となる競技会には今年で10年目の出場となり、主催団体からは「学部生の参加は珍しい」と注目されている。
1月上旬、浜松市中区の同大で同部1、2年生約10人が昇降機の仕様を検討した。9月に福島県で開催される今回は、小型ロボットも載せる難度の高い部門に出場する予定。難度が上がる分、これまでと比べて機体の大きさやモーターなどに必要な大幅な変更を確認した。2年の安居知哉さん(21)は「夢のある話に向けて現実的な知識が蓄えられていくのが面白い」と励む。2年の長井秀文部長(21)は「部員の予定を合わせ、製作を含めると時間はあまりない。できる限り工夫したい」と話す。
顧問を務める山極芳樹・同学部教授は、同学部がSE実現に向けた実験を行った超小型人工衛星「はごろも」の開発主導者。衛星開発は大学院生らが中心となって臨むため、部活での取り組みは基礎レベルに当たる。部活では詳細な指示はせず、「学部の早い段階での悩みや失敗が将来につながる」と見守る。
競技会は2009年からJAXA職員や大学教員らでつくる宇宙エレベーター協会が開催。風船から垂らした約100メートルから最大で1キロ以上の長さのケーブル上で昇降機を動かし、制御の正確さや上り下りの早さなどを競う。
同協会の大野修一会長は「機械工学が専門の出場者が多い中、宇宙での研究成果がある静大はその強みも生かしてほしい」と期待する。
<メモ>宇宙エレベーター(SE)は地球の自転と同じ周期で回る赤道上の高度3万6000キロの静止軌道上に宇宙ステーションを設け、地上とケーブルで結んで人や物資を運ぶ構造物。強度が高くて軽いケーブルが必要だが、1990年代に「カーボンナノチューブ」という素材が発見されて実現可能性が高まった。建設技術は2050年ごろに整うとみられている。
競技会はこうした経緯を踏まえ、SEの理解促進も目的に始まった。地上での開催だが昇降機の制御や耐久性など基礎的な技術が測れ、国内外の研究室や社会人チームなど毎回約20団体が出場する。
SEをめぐっては静岡大が18年3月まで、ケーブルに見立てた100メートルのひもを宇宙空間で伸ばす実験を、開発した超小型人工衛星「はごろも」を使って実施。同大は現在、ケーブル上で小型昇降機も動かそうと後継衛星「てんりゅう」を宇宙空間で運用している。
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