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戦禍の記憶受け継いで 高齢語り部、静岡県内で奮闘

(2018/8/15 17:01)
戦争や平和について語り合うことの重要性を訴えている橋口傑さん=10日、富士市のロゼシアター
戦争や平和について語り合うことの重要性を訴えている橋口傑さん=10日、富士市のロゼシアター

 終戦から15日で73年。戦争の惨禍を次世代に伝えようと、高齢になった語り部が静岡県内各地で奮闘している。戦地に赴いた人は80代後半から90代、幼少期に空襲を経験した人も70代になった。語り部が年々減少する中、「生の声を聞く機会が失われる」との危機感から、戦争の記憶を引き継ごうと力を振り絞っている。
 「今年こそ、僕の生涯最後の話だと思って聞いてください」―。10日、富士市の戦争展に登壇した「富士の語りべの会」代表の橋口傑さん(92)は、満蒙開拓青少年義勇軍として旧満州(中国東北部)に渡り、戦後に中国人民解放軍で働いた体験を語った。「兵隊をがんじがらめにして戦争は嫌だと言わせなかった。それが日本の政治のやり方だったんです」。言葉には熱がこもった。
 発足から約30年。かつては約80人いた会員も「10人も生きているかね」というのが現状だ。自身も体力の限界を感じ、活動回数を減らした。近年は戦後生まれの世代に向けて「戦争について語るのは決して難しい話じゃない。聞いたことを受け継いで」と訴えている。
 浜松ユネスコ協会の服部文枝さん(86)=浜松市南区=は約30年前から、もんぺ姿で子どもたちに空襲の講話を続けている。「年寄りと暮らす家が減り、家庭で戦争の話をしなくなった。でも、教科書や本だけでは分からないことがある」と活動の意義を語る。
 静岡市葵区の静岡平和資料センターでは5日、同市駿河区の井上弘士さん(83)が静岡空襲の恐怖を語った。語り部を始めたのは昨夏。耳を傾ける若者の姿にやりがいを覚えつつ、「記憶が薄らいだ部分があり、思うように伝えられない」ともどかしさも感じる。
 次の担い手になろうと、2011年に「語り部の会」を発足させたのは、戦争で父親らを失った遺族でつくる浜松市の浜北区遺族会。物心が付かない頃に終戦を迎えた世代を中心に、親族や知人の戦争体験などを元に出前授業を行っている。活動は会員のボランティア精神と使命感が頼りだ。語り部の会の伊藤慶子会長(74)は「戦争に直接関わりがない、もっと若い人にも受け継いでもらいたい」と期待を掛ける。

 ■今秋から浜松で養成講座 語り部
 戦後世代に語り部活動を継承するため、浜松市中区の浜松復興記念館(斎藤謙二館長)は今秋、語り部養成事業を開始する。市民から10人程度の希望者を募り、戦争体験者や有識者、話し方教室の講師などの講座を毎月1回、1年間かけて受講してもらう。
 現在、市内で熱心に活動する語り部は20~30人程度。高齢化が顕著になっているため、新たな語り部を育て、市内の学校での出前授業などを担う人材を育てる。斎藤館長は「20~30代の若者にも多く参加してほしい。約2千人が亡くなった浜松大空襲を語り継ぎたい」と意気込む。
 県外では既に、戦争関連施設を拠点にした人材育成が始まっている。厚生労働省が2016年度から昭和館(東京都)など3施設で行う育成事業は、月1回の研修を3年間受講するコースで現在1~2期の58人が学ぶ。
 京都府の舞鶴引揚記念館では04年から語り部の養成を始めた。10年に一時中断したものの15年に再開。1年間12回の講座で中高生を含む若手の語り部が誕生している。山下美晴館長は戦争体験を伝える際、「いかに自分に置き換え、実感や共感をしてもらえるかが大切」として「語り部の話や体験活動などさまざまな方法で理解を深めている」と語った。

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