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戦争遺品は今(3)施設、収蔵スペースに限界

(2018/8/16 11:03)
来秋の新築移転が予定されている県護国神社の遺品館。遺族から寄せられた戦没者の遺書や軍服などがガラスケースの中に所狭しと並べられている=8月上旬、静岡市葵区
来秋の新築移転が予定されている県護国神社の遺品館。遺族から寄せられた戦没者の遺書や軍服などがガラスケースの中に所狭しと並べられている=8月上旬、静岡市葵区

 決死の覚悟を示すため出撃前の兵士が自らの血で日の丸を描いた日章旗、弾痕が残る軍服、家族に宛てた手紙や遺書…。静岡市葵区の県護国神社の遺品館には、戦没者の遺品がガラスケースの中に所狭しと並べられている。同館と社務所が入る建物は1978年に完成した。老朽化などに伴い、同じ境内の中で来秋に新築移転する計画が進む。
 遺品館の展示内容は、開館した40年前とほぼ変わっていないという。ガラスケースに陳列されているのは約千点。それでも開館以来、遺族から寄せられた遺品の4分の1にとどまるという。
 「遺族から依頼があれば、遺品は全て預かるようにしている。ただ、なかなか展示替えができずにここまで来てしまった」―。禰宜(ねぎ)を務める芦原久雄さん(59)は打ち明けた。
 大規模な展示替えは困難な状況にある。軍装品などに専門的な知識を持つ職員はおらず、遺品の傷みも激しいためだ。「下手に触ると壊れてしまいそうな遺品もある。動かしたくても動かせない」と困惑する芦原さん。「新しく建設する遺品館では、展示はごく限られた形にせざるを得ないのでは」と推測する。
 15年ほど前までは、お盆の時期に家族連れが訪れ、「これがうちのおじいちゃんの旗だよ」と祖母が孫に教えたりする様子も見ることができた。現在はほとんど見掛けることがない光景だ。一方で、戦後70年以上を経過した今も、年間10件程度の戦争遺品の寄贈があるという。
 収蔵スペースの不足も将来的には問題として浮上しそうだ。芦原さんは「神社としてはもちろん遺品を捨ててもらいたくないし、売ってほしくもない。ただ、この先ずっと断らずに受け入れることができるかには一抹の不安もある」と語る。
 実際、長年にわたり市民からの戦争遺品の寄贈を受けていた施設が、最近受け入れを断っている例もある。
 御殿場市の陸上自衛隊板妻駐屯地内にある資料館。静岡ゆかりで「軍神」とされた橘周太中佐や、郷土部隊の遺品などを多数受け入れ、展示してきた。1983年6月には地元自治体や有志らの寄付により現在の施設が建てられ、遺品の受け入れも続けてきた。
 ただ、4、5年前から戦争遺品の受け入れを断っているという。多田邦生館長は「維持管理にお金がかかる上、収蔵スペースの問題もあり、受け入れを中止した」と説明した。

 <メモ>県護国神社の遺品館の新築工事は、戦後70年の記念事業として、同神社や県遺族会などが計画した。当初は寄付金など1億5千万円を集め、2016年度の着工、18年3月の完成を目指した。しかし、遺族会の世帯数が近年、大幅に減っていることから目標額に達しなかった。このため寄付金の締め切りを1年間延長、工事費も1億円とし、平屋建ての建物は鉄筋コンクリートから鉄骨造りに変更するなどした。

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