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戦争遺品は今(1)ネット売買、若者が関心

(2018/8/16 11:00)
裏地が継ぎはぎだらけの旧日本陸軍の将校用軍服。中学3年の男子生徒がネットで6000円で購入した=7日、浜松市
裏地が継ぎはぎだらけの旧日本陸軍の将校用軍服。中学3年の男子生徒がネットで6000円で購入した=7日、浜松市

 「この将校のズボンは1万1千円、裏地が継ぎはぎだらけの軍服と帽子は6千円」―。浜松市内の中学3年の男子生徒(14)は、半年前に初めてインターネットで購入した旧日本陸軍の制服を手にしながら、誇らしげな表情を見せた。
 インターネットで太平洋戦争当時の兵士や戦時下の一般国民が使用した「戦争遺品」が取引されているのを知ったのは、中学2年の初めごろ。母(38)の実家の蔵の中で古い白黒写真を見つけ、初めて顔を見た軍服姿の曽祖父の兄弟(故人)の所属部隊を調べていた時だ。
 探していた軍服の画像を拡大すると、専門店のサイトにつながった。クリックすれば、軍服や勲章、寄せ書き日章旗を購入できる。数百円から数十万円の値が付いていた。
 男子生徒は「最初は遺族が売りに出すことに驚き、罰が当たらないかと心配した」と語る一方、「見た瞬間、格好いいと思った」と打ち明ける。「社会の勉強にもなるから」と母親を説得。会社員の父親(39)には実際に品物が届いてから母から話をしてもらった。父からは「大切にしろ」とだけ言われた。3日に1回はタンスから軍服を取り出し、鑑賞している。
 日本の戦争遺品には海外の人々も関心を寄せる。軍服だけでなく、水筒や眼鏡、タバコなど約100点を収集した函南町の介護職の男性(27)には、会員制交流サイト(SNS)を通じて主にアジアから「これは何という軍服なのか」などと問い合わせが来る。「最近は中国や台湾の人たちが旧日本軍について関心を持っている」と男性。翻訳機能を利用して「日中戦争の時に着用されていた」などと返信している。
 男性は当時の軍服を着て、ネットで募った仲間たちと実際に山で野営したこともある。「実物を見て勉強し、触って感じる。これ以上の戦争を知る手だてはない」と話す。
 事務所内に積み上がった箱入りの「支那事変従軍記章」と「勲八等白色桐葉章」。1個千円前後だ。2人にネットを通じて軍服などを販売した元塾講師で「染屋軍装」代表の染屋雅俊さん(53)=神奈川県茅ケ崎市=によると、駅近くのリサイクル店などに遺族が勲章類を二束三文で売りに出すケースがあり、そうした店から段ボールに入ってまとまって届くという。
 数年前から顧客層が10代、20代になった。染屋さんは「自分は基本的には反戦思想の持ち主。博物館では同じ物は1個あればいいので、重複するものは行き場を失ってしまう。ならば、同じ物はビジネスを通じて多くの人に買ってもらった方が遺品保護につながる」と持論を語る。
 7歳の時、父がフィリピンで戦死した県遺族会長の杉山英夫さん(80)=静岡市駿河区=は「父の遺品があれば家宝にしたはず。戦勝国で戦利品として売り買いされているのは知っていたが、ネット上で遺品が取引されるような事態は考えの外にあった。太平洋戦争が遠くなっていることを物語っているのでは」と話した。
     ◇
 戦後73年を迎え、高齢化した遺族らが戦争遺品を手放すケースも増えている。現状を追い、どう向き合うべきかを探った。

 <メモ>戦争遺品は専門店によるネット販売のほか、ネットオークションなどでも多数取引されている。オークションにはコレクターが出品するケース以外に、遺族が故人の遺品一式をまとめて出すケースもある。遺族の出品の場合、市場価格よりも安い価格が設定されることも多い。コレクターの中には、戦闘シチュエーションなどを具体的に設定し、軍服を着て太平洋戦争を追体験しようとする「ヒストリカル」という仲間内のイベントに参加する人も多いという。

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