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<キノコ生産者>増島農園(伊豆の国市)

(2019/1/21 11:00)
先代の「誇り高い百姓であれ」という言葉を胸に、高品質な「白あわび茸」の生産に励む増島健太郎さん
先代の「誇り高い百姓であれ」という言葉を胸に、高品質な「白あわび茸」の生産に励む増島健太郎さん
県産スギのおが粉
県産スギのおが粉

 田園地帯を伊豆箱根鉄道が走る伊豆の国市原木。キノコの菌床栽培を行う増島農園で、園主の増島健太郎さん(46)が培養室の扉を開ける。一瞬でふくよかなキノコの香りに土の匂いが交じった、湿り気のある空気に包まれた。
 高さ約2メートルの棚に所狭しと並ぶ容器からずんぐりと軸を伸ばすのは「白あわび茸」。今やどのスーパーにも並ぶ人気のキノコ、エリンギだ。
 各地のエリンギを試食したバイヤーが太鼓判を押す主力商品。父で先代の正昭さんが1990年代に国内でいち早く栽培確立に成功し、初めて採算ベースに乗せた。「菌床の木くずや、水分と栄養の配合を変えながら何百回も試作を重ねていた。成功まで2年近くかかっていた」。父は子供心に憧れの存在だった。
 市場での引き合いも安定していたが、大手が栽培に乗り出し価格低下が進む中、正昭さんが急逝。10年前に家業を継いでからは、飲食店や高級路線のスーパーとの取引をメインに転換を決めた。
 作業を手伝っていた子供の頃から「目に見えない菌が、立派なキノコに育つ不思議で神秘的な世界に引き込まれた」。毎週約2万本の菌床を新規に仕込み、一つ一つ見て、嗅いで、品質を確認する。わずかな雑菌で匂いが変わり生え方や形が不格好になるからだ。数値化されたものがなく五感が頼りの作業を全て1人で行い「一年中気が抜けない」と苦笑する。
 もの言わぬ相手と向き合う地道な作業の支えは、「誇り高い百姓であれ」という先代の言葉だ。「人様の口に入るものを作る仕事だから常に工夫をして高い品質を目指す。それが結果的に農家の地位を守り、やりたい農業を農家に取り戻すことにつながる」
 希少な品種にも挑戦し“インスタ映え”する黄色い傘が洋食店で重宝され、風味豊かな「たもぎ茸」や、シャキシャキした軸がおいしい「ヤナギ松茸」も出荷する。「温暖な伊豆の利点を生かし、いつかは先代を超えるキノコ職人になりたい」。先代の口癖だった「愚直にコツコツ」の意味を日々かみしめている。

 ■コレがなくっちゃ
 県産スギのおが粉
 大手の中には菌床に低価格で収穫量が増やせるトウモロコシの芯の粉を使う企業もあるが「キノコ(木の子)なのだから」と県産スギの間伐材のおが粉にこだわる。香りやうま味が格段に増すという。

 ■ドンナトコ コンナトコ
 狩野川水系の豊かな水と豊富な日照量に恵まれた伊豆の国市。周辺はイチゴの生産者が多く、増島農園も祖父東作さんの代までイチゴ専業だった。先代が建てた築30年の工場は、菌打ち後に菌糸をしっかり根付かせる熟成室や、スチーム釜で菌床を殺菌する芽揃[ぞろ]え室、培養室など段階に応じ6部屋がある。古く味わいのある工場の入り口には先代の写真が飾られ、家族や従業員が商品の袋詰めなどを行う様子を静かに見守っている。

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