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<ゆがけ師>萩原ゆがけ工房(焼津市)

(2018/9/3 11:00)
いぶした皮の香りが漂う工房で、ゆがけを作る萩原貢さん(左)と厚さん
いぶした皮の香りが漂う工房で、ゆがけを作る萩原貢さん(左)と厚さん
こて
こて

 和弓を引くのに欠かせない道具の一つ「ゆがけ(弓懸け)」。シカ皮製の手袋で、右手に付けて手を保護する。ゆがけを製作する「ゆがけ師」の萩原貢さん(48)と父の厚さん(77)=焼津市=はほぼ全ての工程を手作りで仕上げる、全国で10人もいない職人だ。
 県内外の経験者や上級者から製作、修理の依頼を受ける。貢さんは「できる限り要望に応えられるところ」を手作りの良さに挙げる。
 手形を取り、指の長さや幅の数値を参考に皮を裁断する。ぴったり過ぎず、緩過ぎず。ゆがけの中で指を動かせる数ミリ程度の余裕を持たせるよう、裁断や縫製などの過程で調整する。
 弦を掛ける親指部分は作製が難しい工程の一つ。親指を覆う木製の「帽子」を指の大きさに合わせて削り、白玉粉を煮て作るのりで皮に接着する「すげ込み」は、角度によって引き方に影響する。
 弓を引く手先の感覚は個人で違う。その感覚的な部分をゆがけにどう落とし込むか。この道約60年の厚さんは、「経験と勘。着物のようなもので、遊びがどれくらいあればいいかの見極めが大事」と実感を込めた。
 貢さんは、祖父で初代の故直吉さんと厚さんが作業する姿を幼い頃から見てきた。大学卒業後、家業以外の世界を経験しようと企業に勤めた後、「伝統ある貴重な仕事。なくしたくない」と25歳で厚さんに師事した。
 当初は汗で針が滑り、皮を縫うことも、一日中座っていることも難しかった。体験を生かそうと弓道を始めた。仲間の話も聞き、「次はこうしてみよう、と作るのが楽しみになっていった」。
 縫製など機械ができる工程を増やした大量生産品の普及や、皮などの原材料費の高騰、職人の減少など、取り巻く環境は厳しい。「お客さまから『よく当たるようになった』『しっくりする』と聞くとうれしい」。貢さんの言葉に、厚さんは「いくつになっても勉強だね」。客の期待に応えるゆがけを作るよう、親子で精進し続ける。

 ■コレがなくっちゃ
 こて
 皮を縫い合わせ、残った縫い代の部分を焼いて滑らかにするために使う。ゆがけの中で縫い代が指に当たらないようにするのが目的。炭でこてを温めていた時代もあったが、現在は電熱器を利用している。

 ■ドンナトコ コンナトコ
 焼津市東小川の自宅離れに「萩原ゆがけ工房」がある。工房はシカ皮をいぶした香りが広がる。いぶすと皮が手になじみやすくなるほか、汗などの水分を吸いにくくなるという。
 裁断前の皮や手に固定するためのひもなどが置かれている。2人は道具箱を机代わりに作業し、完成品に「正澄」の銘を押す。
 「焼津弓道具」は県の郷土工芸品に指定されている。同市内には矢を作る矢師や、稽古用の的「巻きわら」の製作者も在住する。

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