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<ピアノ調律師>Gala工房(森町)

(2018/8/6 11:00)
鍵盤を引き出し、ハンマーが鳴らす音を確かめる福田泰博さん。ピアノが本来の音を取り戻していく=掛川市内
鍵盤を引き出し、ハンマーが鳴らす音を確かめる福田泰博さん。ピアノが本来の音を取り戻していく=掛川市内
工具
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 引き出した鍵盤の先に、淡い木目のハンマーが艶めいて跳ねる。先端のフェルトには、鋼の弦をたたき続けて摩耗した跡。Gala工房の調律師、福田泰博さん(78)=森町=が小さな針を刺し、丁寧にほぐす作業を繰り返した。一音一音の硬さが整い、ピアノが在るべき音を取り戻していく。
 国際的な奏者のリサイタルを控えた掛川市内のホール。「どのピアノにもそれぞれの長所がある。環境や条件を計算して、個性を引き出すことを常に考える」。引き締まった腕を動かしながら、鍵盤の奥に厳しい視線を走らせた。
 この道60年の練達の士。ホールや教室、一般家庭のピアノと現役で向き合い続ける。「この年で初めて、という経験は今でもある。まだまだ学ぶことばかり」。年季の入った工具を手に、真剣勝負は繊細を極める。
 野球に打ち込んだ掛川西高から、県内の大手楽器メーカーに就職。ピアノが加速度的に普及した時代、「製造する人手が絶対的に足りない。調律だけでなく、全部やらせてもらった」。塗装や組み立ても経験しながら、8千といわれる部品の役割が自然と頭に入った。
 野球で染み付いた“徒弟関係”はもちろん、体力や反射神経が生きていると感じている。「会場入りした奏者の要望を聴いて、開演までの時間との闘い。部品が壊れていた時は、代用品を探して大急ぎで店を回った」。状況に追われながら、奏者の言葉に込められた理想に近づけていく。
 あくまで裏方を自認し、「仕上げた音を生かすのはピアニストの力」と言い切る。それでも「こういうふうに弾けと、このピアノが教えてくれました」と思わぬ言葉を掛けられた時は、静かに喜びをかみしめた。
 災禍で傷ついた品や、オークションで落札された名品を修復したことも。「全ての楽器に思い入れや物語がある。どうしてもこのピアノで弾きたいという思いが響いてくるのはうれしい」。流れる音色の中に、ピアノと共鳴する心の声を聴く。

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