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<ザック職人>ブルーパー・バックパックス(川根本町)

(2018/7/16 11:00)
ナイロン生地からザックのパーツを切り出す植田徹さん。オーダー製作のため、使用者によってその長さや幅は変わる
ナイロン生地からザックのパーツを切り出す植田徹さん。オーダー製作のため、使用者によってその長さや幅は変わる
上下送りミシン
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 南アルプスの山肌が新緑にきらめき、登山シーズンの到来を告げている。麓の大井川鉄道千頭駅(川根本町)近くの小屋でも、登山用バッグ(ザック)製作が真っ盛り。赤、青、黄…ビビッドカラーが気分を盛り上げる。「時間はかかるが、全てハンドメード」。ブルーパー・バックパックス店長の植田徹さん(29)が、生地にはさみを入れた。
 生まれ育った藤枝市の小学校教諭から、ザック職人に転身したのは今年4月。ルーツは南アルプス登山に熱中した大学時代だ。既製品の性能に満足できず自作した山岳用品が注目を浴び、愛好家の間ではちょっとした有名人になった。
 そんな折の2016年、山で偶然出会ったのは山岳ランナーの望月将悟さん。「ザックを作ってくれないか」。4連覇が懸かる日本アルプス縦断レースまで、残り1カ月を切っていた。無理は承知の依頼だった。
 だが「雲の上の存在」と憧れてきた人からの頼みに、腹をくくった。寝る間も惜しんで作り上げたザックは、偉業を成し遂げた男の背にあった。「職人としてやっていく、確かな自信になった」
 使用するのは、自らの目で選び抜いた米国製のタフなナイロン生地。パーツ一つ一つを切り抜き、縫製して成形する。
 その型紙に一つとして同じものはない。重量や形、ショルダーの長さ、ポケットの位置…顧客から聞き出した細かな要望に、適切な重心バランスなど、登山家としてのアイデアを融合させる。唯一無二のバッグを作り出すための共同作業。流線形のフォルムや余分な装飾を省いた面構えも、計算された機能美だ。
 屋号に掲げた耳慣れない英単語は、野球の「blooper hit(ポテンヒット)」から取った。地味に、愚直に、良いバッグを作りたい。縫い、背負って登り、また縫い直すの繰り返し。山土にまみれた手で、理想のザックを追い求めてきた。
 山への愛情だけが原動力だ。「南アルプスがどの山よりも好きだから。この山々に挑む人たちを支えたい」。店の外に広がる悠大な連峰のパノラマ。見つめるその瞳は、きらきらと輝いていた。

 ■コレがなくっちゃ
 上下送りミシン
 植田さんいわく「かなり古い物だと思う」。中古で安く購入できたが、生地を上下の歯で送る機能を備えた優れ物。ナイロン素材のザックも縫いやすく、非常に重宝している。「もしこれが壊れたら、仕事にならないかも」

 ■ドンナトコ コンナトコ
 大井川鉄道の線路沿いにある店舗兼製作所は、元々同鉄道の倉庫として使われていた小屋を活用した。時折脇を列車が走り抜け、ゴトゴトという音が心地よい。商品ディスプレー用の台に、川根茶の茶箱を再利用したところも気が利いている。
 ザックと同素材を使った財布などの小物類、フライフィッシング用のベストなども販売している。一部商品はホームページ<https://blooperbackpacks.com/>からも注文可能。

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