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<広告美術工>ミキ画房製作所(浜松市西区)

(2018/6/18 11:00)
広告看板を製作中の上村浩太さん。工場には手描きのイラストや文字が踊る看板が並ぶ
広告看板を製作中の上村浩太さん。工場には手描きのイラストや文字が踊る看板が並ぶ
デザイン制作器具
デザイン制作器具

 青い塗料を浸した筆先を、ためらいなく真っさらな看板に乗せた。広告製作・ミキ画房(浜松市中区)の上村浩太社長(47)。ごつごつとした太い指、大胆な筆運び。それらに似つかわしくない、端正な文字が次々と描き上げられていく。「美しい看板を、1時間で仕上げる。それがプロの仕事」
 画材を切断する工具が無造作に並び、体格の良い広告美術工が行き交う製作所(同市西区)は、アトリエではなく「工場」と呼ぶのがふさわしい。父計介さん(70)の“英才教育”により、この半世紀以上続く老舗を継ぐのは自然な流れだった。幼少期から絵画教室に通い、店の手伝いに明け暮れた中高時代を経て、美術大学では油絵や彫刻を学んだ。
 下描きはプロジェクターで見本を看板に投影し、複雑な書体の文字やイラストを、鉛筆で丁寧に描き写す。灼熱[しゃくねつ]の投影光を全身で浴びながらの作業で、ポロシャツにはうっすら汗がにじむが、顔色一つ変えない。
 本番で心掛けるのは、失敗を恐れず筆を動かすこと。後は「長年の経験と勘」に身を任せる。凸凹のないなめらかなアール(曲線)が美しさの決め手だ。完成した看板は、よく見れば線の太さや文字間がふぞろいで、色むらもある。コンピューターによる“完璧”な看板にはない、柔和であたたかいムードをまとう。
 8人の従業員を抱える同社で、筆描きができるのは自分だけ。1960~70年代に手描きの看板であふれていた製作所は、印刷製造中心へと移り変わった。「時代の流れに付いていくのも必要だから」。大量に余った画材を見て、寂しそうに言う。
 コンピューターグラフィックスや印刷技術を駆使した、見た目に派手な看板がちまたにあふれるようになった。だが素材や形式が変わろうと、看板の本質は変わらないと考える。「大人も子供も、ひと目ですっと分かることが一番大事」。筆を握る手のぬくもりを乗せて、大切な情報を伝え続けていく。

 

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