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<漫画喫茶店主>漫画人(浜松市東区)

(2018/2/19 11:00)
天井近くまで漫画本が埋め尽くす小さな店内で、店主鈴木晴方さん(右)らが漫画談議に花を咲かせる=浜松市東区
天井近くまで漫画本が埋め尽くす小さな店内で、店主鈴木晴方さん(右)らが漫画談議に花を咲かせる=浜松市東区
漫画の原稿・原画
漫画の原稿・原画

 うずたかく積み上げられた古い漫画本の谷間を恐る恐る進んでいくと、小さなカウンターテーブルにぶつかった。「倒れてこないから大丈夫」。漫画喫茶・古本販売の「漫画人」(浜松市東区)店主鈴木晴方さん(67)がカウンターの向こうで手招きした。
 ワンルームマンション程度の広さの店内は1960~70年代の漫画本で埋め尽くされ、鈴木さんですら何千冊、何万冊あるか分からないという。天井に届きそうな平積みの山を見上げながら「宝物もたくさん混じっているから」と笑う。
 出入り口のドアが開く音に気付くと、そそくさとやかんのお湯を沸かし始めた。「漫画の世界に浸るのに余計な会話はいらない」。ペーパードリップでコーヒーをゆっくりと蒸らす間、客が漫画本のページをめくる音だけが店内に響く。しかし、お薦めの作品を尋ねられた途端、静寂は破られ、名場面や作者の逸話など、コーヒーカップを手に客との漫画談議に花が咲く。
 絵描きを夢見ていた小学2年生の時、親戚の家で一冊の漫画雑誌を手に取り、人生が変わった。中高生時代には力強い描写の「劇画」と出合い、その魅力にとりつかれたままだ。
 京都で定職を得たが「いつも漫画のことばかり考えて身が入らなかった」。35歳で地元に戻り、好きな作品だけを並べた夢の空間を作った。あれもこれもと買い付けた大量の漫画本が喫茶スペースをのみ込み、初めは13席あった客用の椅子も、いつしか3席になった。
 青春時代を過ごした往年の漫画は全てが手書きで、「作者の情熱が線や色にあふれていた」と目を輝かせる。一方、制作のデジタル化が進んだ現在の漫画は、作者の個性が埋没し、「“本物”と呼べる作品がなくなりつつある」と嘆く。
 家族にはそろそろ片付けてほしいと言われているが、「人生の最後まで漫画に囲まれていたい」とかたくな。良作を並べ、漫画には人生を変える力があることを、客に知ってほしいと考える。すっかりページが赤茶色に変わった一冊を手に、お気に入りのワンシーンを話す時の笑顔は、少年のように無邪気だ。

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