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<陶芸作家>藤枝市陶芸センター(藤枝市)

(2016/12/5 11:00)
ろくろに向き合い花器を作る前田直紀さん。土との対話に息を凝らす
ろくろに向き合い花器を作る前田直紀さん。土との対話に息を凝らす
仕上げごて
仕上げごて

 冬将軍が早々に列島を見舞った11月下旬、藤枝市の山間地にある市陶芸センター。学校の教室ほどの工房を石油ストーブが静かに暖める。館長の前田直紀さん(39)が腕をまくり、回転するろくろに向かう。
 ぬらした両手のひらで粘土の塊をつかむ。表面に筋を付けながら筒状に伸ばし、指先から手首、腕まで突っ込んで形を整えていく。国際イベントに向けて制作依頼を受けた花器の試作だ。
 「集中すると、もろい箇所に気付き、泥を欲しがっている所が分かる。五感を鋭くして、土と対話する感覚」。いすに掛けて底部をのぞき込み、立ち上がってバランスを見る。息を凝らし、眉根を寄せ、土のくせを読む。
 子供の頃、市内の公民館で体験講座に参加した。大学で環境デザインを学び、授業で陶芸と再会。百貨店の食器売り場を設営する仕事に携わり、職人や工房との縁が深まった。作家に見込まれ京都で修業し、個展から生まれた注文はなりわいに変わった。
 「就職氷河期を経験し、やりたい仕事など無理だという空気はあった。でも動いてみれば、かなうこともある」。フランスの財団の滞在支援制度に応募し、ピカソが陶芸に魅せられた村バロリスで修業するチャンスを得た。現地の格式あるホテルで作品が展示され、欧州やアジアにも人脈を築いた。
 今春、現在の立場にと白羽の矢が立った。決して窯業産地ではない土地で、「この仕事を任されるのはありがたいこと。自分だからできることを実践したい」。施設職員と企画を練り上げ、来館者の創作をサポートする。工房の棚には、とり年にちなんだ体験製作の焼き物も姿を見せ始めた。
 自らの創作は深夜まで続く。ポップな食器から重厚なオブジェまで、全ての工程に学ぶことは多い。「誰かのために作ることは、作家として成長させてくれる。使う人たちが求めているものを考えたい」。ろくろを止めて背筋を伸ばし、静かに土の声を聞く。

 ■コレがなくっちゃ
 仕上げごて 

 器の内側を同じ角度で磨くためのへら。作品の大きさや形状によって当て方はさまざま。成形の工程でできた表面の筋を抑え、すっきりした風合いに仕上げる。

 ■ドンナトコ コンナトコ
 1989年に市が開設。現在は地域の管理組合が運営し、年間約7千人が訪れる。
 電気とガスの窯4基をはじめ、電動を含む62台のろくろを用意。器に美しい光沢を与える上薬は、作品に合わせて10種類ある。
 1回だけの体験会や10回シリーズの本格教室、こどもの日やハロウィーンなど季節行事に合わせた特別企画を開く。施設側で焼き上げた来館者の作品の数々は、受け取りまでの期間に展示スペースで見ることができる。

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