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<山腹工事監督>大谷崩れ(静岡市葵区)

(2016/11/21 11:00)
山腹でのモルタルの吹き付け状況を確認する鈴木聡さん(左下)。周囲に雄大な大谷崩れが広がる
山腹でのモルタルの吹き付け状況を確認する鈴木聡さん(左下)。周囲に雄大な大谷崩れが広がる
雷警報器
雷警報器

 四方の山々を紅葉が彩る静岡市北部の梅ケ島地区。安倍川の源流を持つ大谷嶺(1999メートル)一帯に、大規模な土砂の崩落跡「大谷崩れ」がある。作家幸田文が「崩れ」に描いた迫力そのままに、岩肌がむき出しの深く長い谷間は、まるで樹林に彫刻刀を入れたようだ。
 大きなV字をつくる崩落斜面の一角で、山腹の補強工事が進む。豪雨で新たな崩落が発生するのを防ぐため、半世紀前に始まった壮大な事業の一部分だ。標高約1700メートル。斜面を固めるモルタルの吹き付け作業を、主任監督員の鈴木聡さん(54)が10メートルほど離れた所から見上げる。
 「吹き付けは均等になっているか。岩の接ぎ目も確実に覆っているか。作業に無理がないかも重要な視点」。のり面に取り付けた狭い足場に立ち、命綱を付けた作業員とのやりとりに神経を研ぎ澄ませる。
 地図に残る仕事に憧れて公共土木の道へ。国交省の県内事務所に勤務し、工事の発注や現地調査など幅広く経験を積んだ。故郷近くの川根本町では長島ダムの建設に携わり、完成に身震いするほどの感慨も味わった。昨春から梅ケ島出張所を任され、雪のない季節に集中的に作業を進める。
 尾根の資機材置き場にたどり着くだけでも、工事用道路から業務用モノレールに乗り換えて30分はかかる。作業現場の険しい箇所は、50度を超す急勾配も。作業中の感覚は垂直に近い。「工事に取り掛かるだけでも困難を極める。それでも作業に挑んだ先人の覚悟に頭が下がる」。大自然への畏怖を受け止め、そびえる岩壁と対峙[たいじ]する。
 作業区画は年ごとに山腹を移動する。施工が完了した箇所は、特殊モルタルにアザミが花を付け、ススキが風に揺れる。市民の協力で植樹も続け、荒れていた山裾の緑は回復の兆しを見せている。
 作業の行き帰りに時折、登山者との触れ合いがある。「気が遠くなるような作業だが、流域の安全に深く関わっている。自然を前に、人間はどう立ち位置を築くか考えないと」。一足早い冬が迫る山の表情を感じ取りながら、今年も自然の恵みに感謝する。

 ■コレがなくっちゃ
 雷警報器

 山間部の変わりやすい気象を事前に察知するための必需品。半径60キロ以内での雷の発生を感知し、音と光で知らせる。警報とともに現場の作業は中断し、モノレールで速やかに下山する。

 ■ドンナトコ コンナトコ
 1707年の宝永地震で大谷嶺一帯に形成され、大雨などで土砂崩れを繰り返してきた。崩落した斜面の広さは180万平方メートル、土砂の量は東京ドームの約100個分と推測される。
 安倍川上流域の砂防事業は1900年代に始まり、50年代から大谷崩れ周辺でも実施。斜面や川床を安定させ、土砂の流れを調整している。
 富山県の鳶山[とんびやま]崩れ、長野県の稗田[ひえだ]山崩れと共に日本三大崩れに数えられる。

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