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2018年9月12日【大自在】

(2018/9/12 07:45)

 「命の移し替え」。食材を命と捉え、野菜や、ご飯の一粒一粒が口を通して(自分の)命と共に生きていく。もう10年余も前になる。おむすびが代名詞の佐藤初女[はつめ]さんが講演で各地を回っていた頃、県内の会場で聞いた言葉だ
 ▼青森県の岩木山の麓に心に重荷を抱えた人たちを名前も理由も聞かず優しく受け入れる家「森のイスキア」を開いた。おむすびや山菜の手作り料理でもてなし、ひたすら耳を傾ける。訪れた人は帰る頃には荷を下ろし、再び生きる力をもらい家を後にした
 ▼地の物を使った料理を食べるうちに心の扉は少しずつ開いてくる。おいしいと感じた時、初めて人の心は動く。心の内を聞いても人生相談の回答者のように解決策を話すことはない。「ただ、聞いてあげるんです」。そう話していた
 ▼おとといは「世界自殺予防デー」だった。世界保健機関(WHO)の発表によれば、世界で毎年約80万人が自殺で亡くなっており、2016年には15~29歳の青年層で死因の2位になった。心の重くなるニュースに今は亡き佐藤さんの穏やかな言葉をつい思い出した
 ▼16年の世界の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は推計10・53。日本は10年に19と高かったが、16年には14・3と低下傾向にある。本県の自殺者も昨年、20年ぶりに600人を割った
 ▼調理することはその人の生きる姿、生き方そのもの。佐藤さんは言った。満足にご飯が食べられない子どもに食事や居場所を提供する子ども食堂が今年全国で2千カ所を超えたという。食べることは生きること。そう思う。

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