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2018年2月11日【大自在】

(2018/2/11 07:42)

 ▼水俣にただならないことが起きている-。猫やカラスの不審な死が相次ぎ、そのうち手足のしびれや痙攣[けいれん]の症状を訴える人が増え死者も出始めた。1950年代、熊本県水俣市で発生した奇病は後に「水俣病」と命名され、化学会社チッソの工業排水中のメチル水銀による中毒と分かる
 ▼「見届けたい」一心でひたすら土地を歩き、患者や家族、関係者の言葉に耳を傾けた。苦痛、恐怖、差別、迫害、死、絶望…。極限状態の患者らの実相を描いた大作「苦海浄土[くがいじょうど]」は全3部。完結までに足かけ40年をかけた
 ▼きのう、著者の石牟礼道子さんが亡くなった。水俣に寄り添い、環境と人間、自然と文明の在り方を問い続けた。それでもなお、水俣病という巨大な災厄の全体像はつかみきれず、解決の道筋も見通せない現実が横たわる
 ▼救済認定や賠償を求める患者らの訴訟は各地で起こされ、健康被害の影響調査も不十分な地域が残る。2年前、石牟礼さんは水俣病公式確認60年を振り返る講演会に病を押して映像で参加し「今からでも遅くない」と行政に全容解明を求めた
 ▼〈土と水と緑を自らの手で殺し続けて来て日本人はその罪にまだ気づかない。水の地獄がすぐ目の前にやって来ようとしているのに〉。エッセー集「花びら供養」(平凡社)の一編から引いた警句だ
 ▼昨年、水銀規制の国際取り決め「水俣条約」が発効。初の締約国会議で胎児性水俣病患者の坂本しのぶさんは、車いすに乗った身をよじりながら懸命に訴えた。「水俣病は終わっていない」。石牟礼さんの思いも同じだったろう。

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