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2018年2月3日【大自在】

(2018/2/3 07:20)

 ▼リヤカーに立てた旗竿[さお]に揺れる「のり」の2文字は何とも味があった。寒風吹きすさぶ中、路上の吸い殻やごみを火ばさみで拾いながら行商に回る男性を静岡市内で見掛けた。青いパーカーに地下足袋。「歩きやすいけど、冬は冷たいですよ」。呼び止めると、静かな笑顔が返ってきた
 ▼荷台の木箱には板のりのほか、昆布などの乾物類。家業はのり問屋、自身はのり加工会社に勤めていたが1年半前にやめた。41歳、独身。周囲の反対を押し切って街へ出た。「うまく言えないんですが、どこか違うなって感じてしまって」
 ▼インターネットにスマホ、コンビニもあって現在ほど便利な暮らしはない。「ただそれで、みな満足なんでしょうか」。商売はぼつぼつでも、歩けば肌で四季の移ろいを感じ出会いもある。「もっと大事な何か」が少しずつ見えてきた気がするという
 ▼正法眼蔵(道元)に次の一節がある。〈知足の人は地上に臥[ふ]すと雖[いえど]もなお安楽なりとす。不知足の者は天堂に処すと雖も亦意[またこころ]に称[かな]わず〉。足ることを知る人は、たとえ野宿しても幸せを感じることができるが、知らなければ宮殿に住んでいても満足できない-と
 ▼教えに照らせば、男性は〈知足の人〉へ一歩踏み出したのだろう。話をして多くを考えさせられた。環境破壊が進み貧困層も増え続けるこの世界に、浪費や過剰な欲望を許す余裕はあるはずもない
 ▼今月は省エネルギー月間。持続可能な未来のため、わずかでも暖房室温の設定を下げ、車のアクセルを緩めたい。〈知足の暮らし〉への転換はそこから始まる。

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