静岡新聞NEWS

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • mixiチェック

2017年11月1日【大自在】

(2017/11/1 07:43)

 ▼ちょうど30年前、県立大教授として赴任した金両基[キムヤンキ]さん(83)は駿河湾や三保松原を望む古刹[こさつ]、清見寺(静岡市清水区)を一人で訪れた。江戸時代、朝鮮国王が日本に派遣した外交使節「朝鮮通信使」ゆかりの地と聞いていたからだが、寺はひっそりとして誰もいない
 ▼「当時、通信使のことはほとんど知られていませんでした」。自身が通信使を知ったのは学生時代。古書店で偶然手に取った歴史地理学会の機関誌に行列の絵図と共に記述があった。「徳川家康の平和外交」との文字も目に留まったが、長く意味は分からなかったという
 ▼通信使の意義と家康の役割がはっきりと交差して見えたのは静岡に来てから。豊臣秀吉の出兵で断絶した国交の回復を求めた家康。曲折の末、朝鮮王朝も通信使派遣に応じ、200年にわたる善隣関係の扉が開かれた。「歴史に学ぶ見本がここにある。まさに静岡の宝」
 ▼その宝が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界の記憶(世界記憶遺産)に登録された。日韓の自治体などが共同申請した外交資料333点で、清見寺所蔵の詩文48点も含まれる。風光明媚[めいび]な同寺で使節と僧侶の間に生まれた文化交流の証しだ
 ▼金さんが光を当てた通信使と清見寺。顕彰の輪は年々広がり、市民団体や行政がさまざまなイベントを協働して展開する。通信使がたどった道を歩く日韓共催の友情ウオークも県内で草の根の交流を広げた
 ▼長年の取り組みは、記憶遺産登録という形で大きく実を結んだ。金さんの周りには今、未来を見詰める大勢の仲間がいる。

大自在の記事一覧

ロード中 関連記事を取得中...

ニュースアクセスランキング

  • 読み込み中です・・・
静岡新聞データベース

SBSテレビチャンネル

YouTube
こどもみらいプロジェクト「おやこアットエス」
静岡新聞SBSスクープ投稿
静岡新聞モバイルサイト