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伊豆の食紀行

伊豆の魅力といえばやっぱり味覚!
栽培や漁の現場、こだわりの加工法、そして買える・食べられる場所など、
今が旬の伊豆の幸を、様々な角度からご紹介します。

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桜葉餅
桜葉
旬の時期5月〜8月末に収穫して99%塩漬けに。1%は水ようかんやくず餅の飾り用に生葉で出荷。塩漬けの出荷は半年後から。
世の塩漬け桜葉の98%は桜餅を包んでいるそうだ。そこで、「桜餅の葉っぱを食べるか、食べないか」。私は当然“食べる”に1票。あの甘くて爽やかな香りと熟成したまろやかな塩味があるからこそ、ただのアンコ餅が風雅なお菓子に変身するのだ。柔らかい餅といっしょに、薄い葉っぱをプチッと噛み切る感触も、食べず嫌いの人にお勧めしたい。ちなみに松崎町では産地らしく、2枚の葉が主役の“桜葉餅”(写真左)だ。
全国需要を支える細腕・農家編
 夏葉を茂らせたサクラの大木を思い浮かべていたら、桜葉畑はすっかり肩透かしの光景だった。小高い斜面には、青く細い枝をバサバサと伸ばした低木が、絡み合うように隙間なく並んでいる。新芽が出る直前の2月頃、前年の枝は全て剪定され、高さ20センチ程の切り株になるそうだ。そして新しい枝が、収穫期の今、ちょうど若葉を摘みとりやすい1メートル弱の高さにまで成長している。
 栽培されているのは、伊豆大島原産のオオシマザクラのみ。香りの成分クマリンが多く含まれ、葉の裏側にうぶ毛がなくツルッとしているため、塩漬けに最適な種類なのだという。畑では、稲葉玉枝さんが、慣れた手つきでポンポンと若葉を摘んでいた。無造作なようで、瞬時に葉の大きさや虫食いの穴、傷みなどを見分けている。
 「午前中に採って昼からは“まるける”がです。1日に7、80束くらいかね」と玉枝さん。“まるけ”とは、収穫した葉を大きさで選別し、50枚重ねながら二つ折りにし、葉柄を切り揃えて、干したカヤで縛る一連の作業。
 数千枚の葉を、摘んで、選って、束ねて。全国需要の7割以上をまかなうほどの町の特産品は、気が遠くなるような手作業に支えられているのだと改めて実感した。
 
畑
40年程前、薪炭材として植栽されたサクラの減少、麦など当時の農業の低迷などと相まって、畑での桜葉栽培が始まった

玉枝さん
澄んだ空気とやさしい香りの効能か、作業を終えた玉枝さんは、葉っぱを背負子に詰めて元気に坂を下っていった
洗う
ベテランの人は、葉の束を持っただけで1、2枚の数の違いもわかるそうだ

漬け込み
30石樽には100年以上使われているものもある。少しの歪みやひびも漬葉の出来に関わるが、いまだ故障はないそうだ

 全国需要を支える細腕・漬葉工場編
 町内に2軒ある工場のうち、岩科川沿いの小泉商店にお邪魔した。窓際では女性たちが、水桶にかがみこむようにして葉の束を洗っている。まるでお札を数えるように素早く指でめくりながら、葉の間のゴミを取り、傷や欠けをチェックする。
 「老舗の和菓子屋さんや大手食品会社での利用も多く、髪の毛1本の混入も信用に関わるので気を抜けません」と、社長の小泉邦夫さんは言う。松崎町の桜葉の場合、漬葉業者が直接、契約農家や取次ぎ店から葉を買い付ける。だから、品質確保のための農家への指導や栽培状況の管理も、漬葉業者の大事な仕事だ。
 こうして準備した生葉を、30石、2×2メートルの杉の大樽に漬け込む。はしごを使って3人が中へ入り、円周に沿って葉の束を1つずつ、放射状に並べていく。1日並べ終えると水を張り、1トンの重石をクレーンで吊り上げる。
 次に並べるときには重石を取って、水を抜いて、また3人が樽に降りる。1日おきに繰り返して2週間、1樽でなんと4万束、2百万枚を漬けるそうだ。
 樽の口を密閉し、24、5度の塩分で半年漬け込むと、発酵、熟成して、あの艶やかな薄茶色の桜葉塩漬けが完成。この道のりを考えれば、食べないという選択肢は、やはりないだろう。
お店紹介

[買う]梅月園 桜田店(松崎町桜田 Tel.0558-42-0010/0120-42-0300)
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松崎町内で“桜葉餅”を製造販売する店2軒のうちの1軒。那賀川沿いにある和菓子店。「さくら葉餅」(8個入1200円)。8:00〜20:00、無休。

[買う]菓子処 永楽堂(松崎町宮内 Tel.0558-42-0270)
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2軒のうちのもう1軒。こちらは「長八さくらもち」(5個入525円、8個入840円、10個入1050円)。7:30〜19:00、木曜休。

[買う]カサ・エストレリータ(松崎町松崎 0558-42-3210)
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伊豆の長八美術館隣にある町営ギャラリー喫茶&土産販売店。桜葉を使った商品が多くある。「桜葉クッキー」(大1050円・小525円)、「櫻葉羊羹」(556円)、「桜葉そば」(525円)など。「塩漬けの桜葉」(50枚357円)も購入できる。ギャラリー喫茶では、「さくら葉餅とコーヒーセット」(500円)や「桜葉アイス」(300円)が食べられる。土産販売店9:00〜17:00、ギャラリー喫茶9:00〜16:00、不定休。

[買う]伊豆松崎特産館・なまこ壁(松崎町松崎 Tel.0558-42-3838)
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商工会が運営する物産館。商店街の中にある旧銀行を活用した建物。桜葉商品が諸々揃う。大型金庫を使ったギャラリー、喫茶コーナーも併設。9:00〜16:00、木曜休。

[買う]株式会社 小泉商店(松崎町岩科 Tel.0558-42-1389)
桜葉の漬葉工場。桜葉の風味を生かした「桜葉かすてら」(840円)を販売している。刻んだ桜葉塩漬けを混ぜ込んだカステラの上に、まるごとの葉が2枚乗っている。町営施設の売店で購入できる。
 
聞き込みメモ

なぜ松崎町?
小泉さんから「なぜ、桜葉のほとんどが松崎町周辺でしか作られていないのか」という質問が出された。気候?風土?答えはこうだった。「松崎町が位置する東経137度48分で栽培された桜葉が、香り成分クマリンを最も多く含むから。他で作られた桜葉は、塩漬けにすると黒く変色してしまい、香りもなくなってしまう」そうだ。
葉と塩漬け

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