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伊豆の食紀行

伊豆の魅力といえばやっぱり味覚!
栽培や漁の現場、こだわりの加工法、そして買える・食べられる場所など、
今が旬の伊豆の幸を、様々な角度からご紹介します。

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沼津のひもの
沼津のひもの
旬の時期通年
真アジの干物を‘強火の遠火’でじっくり焼く。だんだん香ばしい匂いが漂い、身の表面が茶色い膜を張ったように色づいてきた。アツアツに箸を入れると中の身は真っ白。ほどよい塩加減がじんわりと口の中に広がる。肉厚部分もいいが、尻尾の血合い、エラの裏側などがまたおいしい。中骨に張り付いた表面をきれいに食べられるとうれしくなる。干物って、つい夢中になってしまう食べ物だ。
消費者も知りたい、学びたい
 干物づくり50年という田藤水産の田代和豊さんに話を聞いて、私たち消費者の認識不足を感じてしまった。
 「多くの人がいろいろなことを知らないままに、イメージで買う傾向がある。見た目やブランドに弱い人が多いね」と、田代さん。
 例えば、「天日干し」にこだわる人がいるが、お天気により一律の製品に仕上げにくく、強い日差しで身が焼けて変質することもある。衛生面にも気を遣う。しかし、乾燥機は、外気を取り込み冷して除湿し、ふたたび温めて干物にあてるので、年中、秋口のような爽やかな風が送れるのだ。「機械といっても、ようは自然の空気。イメージアップに天日干しに負けないネーミングを考えたいね。“沼津千本浜の風干し”なんて、どう?」。田代さんは笑う。
 干物は干すことで程よく酸化し、旨みが出る。しかし最近は、鮮魚に近い色ツヤのものが新鮮だと好まれ、よく干した黄色っぽいものは売れにくいそうだ。酸化防止にビタミンCなどを吹き付けるものもあるとか。
 「好みは人それぞれ。どれがいい悪いじゃなくて、いろいろな選択肢があることを知ればいい」と、田代さん。
 売り場では知り得ない生産現場の話し、聞く機会がほしいなぁと実感した。
 
作業場
開いた魚を手作業で網に並べて乾燥室(写真奥)へ。作業場を見れば昔ながらの感。“機械干し”の言葉はまったくピンとこない

干物
冷凍技術の発達で、旬の時期に1年分の原料を仕入れて保存。製品も急速冷凍、流通網の発達で翌朝には関東方面の市場に並ぶ。
塩汁
田籐水産の塩汁。旨みのもとの微生物がなくならないよう、ろ過の方法や温度管理に工夫する。酒蔵の麹菌や飲食店の秘伝のタレみたいな感じ。

手作業
開きはもちろん手作業。1日ひとり千枚以上を開くという。ベテランならば1枚10数秒の早業だ。

 頑固さと柔軟さを兼ね備えて
 しかしながら、食の傾向が昔と変わってきたことも事実だ。硬いものが苦手な消費者の好みに合わせて、干物の水分量は40%程度から70%近くにまであがったという。そして、塩分もかなり控えめになった。
 干物の塩分は「塩汁(しょしる)」という漬け汁に浸してつける。沼津の塩汁は22、3度くらい。濃いめの塩で魚の表面をキュッと締め、旨みを閉じ込める。中まで塩気を浸透させないから、身には魚本来の甘みが残るそうだ。田代さんの塩汁は昔から変わらず天然塩を使用。こまめに火を入れながら不純物を取り除き、長年足し増しして使い続けているという。
 「親父から言われたことは、『魚に惚れるな、値に惚れろ』。一級品の干物を作ることは勿論のこと、魚本来の値打ちを見極めその特徴を業者の力で生かし、それぞれにおいしい干物に仕上げたい」。田代さんが言うように、沼津の干物の歴史は、時代やマーケットを読み、新しさを取り入れながらも、伝統的な良さを守ってきた加工業者の工夫と努力の足跡だ。
 現在、沼津魚仲買商協同組合で扱う干物は、アジ(全体の約70%)だけで年間24,000t。全国シェア40%以上の実績は一朝一夕にはつくれない。
お店紹介

[買う] ひものアンテナショップ あじや(沼津市春日町 Tel.055-964-1400)

沼津魚仲買商協同組合の直営店。アジ、カマス、キンメ、サバなど、お好きな干物にご飯とみそ汁、漬物がついた「ひもの定食」は525円〜。お土産として各種干物1枚から購入可。予約で開き体験もできる。年中無休。11:00〜14:45。
*『あじや』がある沼津港付近には、『沼津港飲食店街』があり、30軒以上の飲食店や土産物屋が軒を連ねている。


*取材協力店

[買う]田藤水産(沼津市下河原町 Tel.055-962-2688)
真アジをはじめ、各種干物を製造。小売の店舗はないが、工場に顔を出せば少量でも販売してくれる。地方発送も電話で受け付けている。




 
聞き込みメモ

こんな食べ方も
焼いてそのまま食べるのが一般的だし、もちろん、おいしい。でも、毎日のように干物を食べる沼津人は、こんな食べ方も楽しんでいる。
1.焼いてほぐした身と、なめ味噌(金山寺味噌)をご飯に乗っけてお茶漬けに。お好みでしょうゆ味もいける。田代さん曰く、“干物屋のまかない飯”。脂の少ない干物が合う、さっぱり系。
2.食べ残った骨をお碗に入れ、お湯を注ぎ、しょうゆで味をつけ、柑橘類をちょっと搾れば、潮汁風お吸い物の出来上がり。1枚で2度楽しめるお得メニュー。
3.ほぐした身を使ったチャーハンもおすすめ。魚が苦手な子どもでもいけそう。
4.沼津の小・中学校給食には、干物の唐揚げが登場する。骨までパリパリッと食べられるので、栄養価もバッチリ、食べにくさも解消。
干物屋のまかない飯

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